幻想郵便局に呼び起こされたノスタルジー【幻想郵便局】

  • 書名:幻想郵便局
  • 著者:堀川アサコ
  • 出版社:講談社文庫
  • 発売日:1984/9/27
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青森在住の堀川アサコさんの幻想郵便局。
新卒のアズサが就職先が見つからずにいるときに出した、特技「探し物」と書いた履歴書をみて働くことになった山の上の不思議な郵便局「登天郵便局」で起こる、ちょっと悲しくてほんのり暖かくて、非日常的なのに日常的な感じのするお話し。
この本の中にはたくさんのノスタルジーがつまっている。解説が僕僕先生シリーズの仁木英之さんというのも、僕僕先生ファンとしてはうれしい限り。

郵便局というノスタルジー

郵便局の思い出、記憶というものが探してみると、ずっと子供の頃まで遡ることができる。
母親に連れられて近所の郵便局に行った記憶が初めだろう。大きな郵便局ではなかったと思う。逆に街の大きめな郵便局に行くときはちょっとしたお出掛け感があった。
小さな郵便局を入ると、機械めいたATM(機械なんだからこの日本語は変だな)があって、母親の用事が済むまでの間腰かけた待合いのベンチから見る景色はたくさんポスターが貼ってあり、郵便物を計る秤があって、制服を着た局員さんがいて、近所のおじいさんおばあさんが来ていて、なんだか独特の匂いがあった。(ちょっぴり、小さな駅の待合室似ていたもしれない)

カロゴンズのテーマというノスタルジー

昨日ラジオをつけたらちょうど篠原ともえさんの番組だった。日本カワイイ計画。withみんなの経済新聞
カロゴンズのテーマ」が懐メロ扱いってことにちょっとショックを受けたけど。
登場人物ではないけれど、口ずさみやすいメロディーで歌詞が出てきたときに、確かになつかしさがあった。
頭の中でサザエさんの曲ごちゃごちゃになったりもするけど。(財布忘れるからね)

青函連絡船の待合室というノスタルジー

あとがきの中で堀川さんが触れている青森駅の青函連絡船の連絡口は、僕も連絡船が廃止される前に一度乗っておこうと北海道に連れて行ってもらった時に一度通っているはず。
「はつかり」に乗って三戸の祖父母の家に行くのに青森駅はよく使ったけれど、連絡船の入り口の方はめったに行くことがなく、その入り口が子供心に異空間への入り口に見えた。
その頃は自動改札なんてもちろんなくて、新幹線が来るのが悲願だったころの話。
小学校の修学旅行で北海道に行った時はジェットフォイルと青函トンネルだったから、その前のことなんだな。

きっと、小さい頃の郵便局の記憶は、三戸の駅(特急のとまる有人駅だった)のイメージと結びついている気がする。
JRで売っていた、果肉入りのぶどうジュース(果肉入りというか粒がごろごろしてた)が好きでよく買ってもらっていた。
この本を読んで、そんなことをつらつらと思い出した。だから僕にとってこの本は「望郷」「郷愁」の二つの意味でノスタルジーを呼び起こす本だった。
僕に限らず、読んだ人みんなに、そんなこと思い出させてくれる本なような気がする。


熊本の震災によせて

あとがきの中で触れられていることだが、この本は東日本大震災をまたいだ期間で出版されたらしい。
僕がこの本を読んでいるときに熊本の震災があった。
この本を震災というキーワードで二つをつなげるつもりはない。
ただ東北出身の僕にとって直接的に被災したわけではなかったけれど、東日本大震災は大きな影響を与えていて、あの時被災地に住んでいる友人たちの話を聞いたことや、テレビの画面の中で自分の知っている場所がなくなっていったことや、ボランティアに行くこともできず無力感に苛まれたり落ち込んだりした時のことを思い出した。
そうしてふと、東北の大学の学生さんが書いた卒論で東日本大震災でなくなった方が幽霊として語られている話も思い出した。
いろいろなことを思い出した本だった。

【参考】
なぜ、被災地に「幽霊」がでるのか あいまいな死に寄り添い生きる

正直いって自分の中でも、今回の震災と東日本の震災とどのようにつながってこう思ったのか、整理がついていないし混乱もある。その状態でこの記事を書いていることも少し後ろめたさがある。
登天郵便局が、彼岸と此岸をつなぐ場所ならば、もしかしたらそんなことを思ったのかもしれないし、後付けの理由かもしれない。

被災地の皆さんに、早く安心できる日が戻ってくることを、心底願っている。

1冊の本を当たり前に手に入れることができるように。
1冊の本にドキドキしたワクワクしたりする日が早く戻ってきますように。
この本もその中の1冊になりますように。

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