信長時代から江戸初期の武将の短編集【松本清張ジャンル別作品集(1) 武将列伝】

  • 書名:松本清張ジャンル別作品集(1) 武将列伝
  • 著者:松本清張
  • 出版社:双葉文庫
  • 発売日:2016/7/14
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以前おすすめの時代小説を尋ねたところ、松本清張さんの『西郷札』を薦められたことがあっておもしろく読んだ。
今回はその松本清張さんの武将列伝ということで楽しみに購入。

キーワードのひとつは被圧迫感。

圧倒的な実力差から、圧迫される側が感じる圧迫感。
結局その圧迫感に堪えきれず、折れるのは心。
そういう場面を何度も見ることになる。
丹羽長秀や石川数正が秀吉に対して、稲富祐直は家康に。

秀吉が愛されるわけ

いろいろな短編に秀吉が登場するが、秀吉が人に好意を持たれることには著者はひとつの条件を設けているように思う。
信長や長秀が秀吉を可愛がるのは、立場の目上の人間から目下の人間を見た可愛がりであり、上下の関係性において発揮されるものである。

だから長秀や家康は、自分より目下の頃の秀吉には好意を持っているが、自分と肩を並べ一気に抜きさった秀吉に対しては好意が敵意や反抗心へと変わる。
これは立場を追いつめられ、追い越されたからこその感情であって、逆に秀吉がもともと目上にいたものにとってはどうであったか。

足利義昭は奇貨ではなかったか

細川藤孝は殺された将軍義輝の弟義秋(義昭)をかくまい、六角、若狭武田、浅倉と渡り歩く。
呂不韋は秦の公子を邯鄲で見つけ、秦の君主にまで押上げ、自分は宰相の地位まで登った。
藤孝にとって義昭は奇貨だったのか?それとも忠誠の対象でしかなかったか?
信長と出逢うまで義昭に力を貸してくれる実力ある大名に義昭を近づけられなかった藤孝は呂不韋にはなれなかったのか。
しかし、信長に使え豊臣徳川時代も乗りきった藤孝とって、義昭は大切な切符の一枚であったかもしれない。
その義昭も信長に逆らうことを生きがいに、結局60歳過ぎまでいきているのだから、したたかであったのかもしれない。

長秀の腹の中には

しかし、本能寺で信長が横死して人生の狂った人がどれだけいたことか?
明智光秀本人、丹羽長秀、滝川一益、柴田勝家、羽柴秀吉。。。
「腹中の敵」の丹羽長秀の死に様が凄まじい。
己の腹をかっ捌いて、取り出した腫瘍を秀吉に見立てて切り付ける。
このとき本当に長秀が斬りつけたのは誰だったのか?
秀吉なのか、秀吉の下風に立ってしまった長秀自身か。

この本を買ったもうひとつの理由。

以前に『西郷札』を薦められて今回この本を購入したわけだが、実は読もうと思った決め手になったことがある。
本屋さんでどんな本か見ているときに「義光」という文字が目に入った。
おそらくこれは最上義光に違いない。そういうあたりをつけて買ったのだ。

東北の歴史に興味がある。
坂上田村麻呂から、前九年の役・後三年の役、奥州平泉と源平、北畠顕家と太平記、戦国期(伊達、最上、南部などなど)、戊辰戦争と東北のくぐり抜けた歴史。
東北特有の気候風土があり、その中で生まれた文化があり。
以前も触れたけど、中央の歴史から外にいた東北のことを描いた小説はどうしても少ない。
読んでみたい戦国大名もたくさんいんだけどな。

だから、最上義光が出てくるだけで読んでみようと思うのだ。
ズバリ東北ではないけど、浅田次郎さんの『壬生義士伝』も南部藩のお話。

隆慶一郎

陰険な秀忠、柳生の苦悩、鬼子忠輝。。
隆慶一郎さんの作品と題材が共通するものが多いと感じたが、これは順番が逆。
隆慶一郎さんも松本清張の本が好きだったのかな?それとも編集の方が隆慶一郎さんが好きだったのかな?
よかったらこちらもどうぞ。

しかし幸せな末路の人、あんまりいないなぁ。人間死ぬときにしか一番後悔できないのかしら。

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