中国史小説の参考にいい【中国皇帝伝 歴史を動かした28人の光と影】

  • 書名:中国皇帝伝 歴史を動かした28人の光と影
  • 著者:小前亮
  • 出版社:講談社文庫
  • 発売日:2012/8/10
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皇帝しばりということで中国の秦以降の王朝の皇帝を28人紹介。
小説ではないです。
著者の小前亮さんは歴史学者ということもあり、そういう視点で捉えられておられるのかな。

皇帝として優秀だった人、皇帝になるまでは優秀だった人、個人として興味深い人、時代に飲み込まれた人。
皇帝といえど1人の人間であり、その人物像を事績ととも紹介されている。
ご多分にもれず三国志から中国史に入り、その後宮城谷昌光さんに傾倒していった僕としては晋以降は守備範囲外というかさっぱりわからない。

中国の小説の場合、それが庶民の話だとしても皇帝中心の話だったとしても、どうしても世界観の上で王朝・皇帝がどのような状態であったかということは大事な要素となるので、いろいろな小説世界の世界観をイメージする上でとても参考になる本だと思う。
知らなかった時代の、知らなかった人物のこと知る、名前を聞くだけでもおもしろいしね。
諡号と廟号の違いなんていうのも知らなかったし(厳密にいうと気にしたことがなかった)、そういう知識的な情報を知れたことも良かった。

光武帝

読んだ中からちょっとだけご紹介。
漢中興の祖、光武帝劉秀
王莽の新によって簒奪された前漢を復活させた光武帝である。
ちなみ王莽も本書で紹介されている。

三国志好きなら知っておいた方がいい。彼から後漢は始まり三国志の世界はその上にあるのだから。
それでオススメなのは宮城谷昌光さんの「草原の風」。
簒奪から統一まで、一人の簒奪者をやっつければすむといった単純な情勢ではなくて、各地に起こった有力者たちとも戦いになるという時代。乱世だ。

光武帝はユーモアのある人だったらしく、彼の残した言葉がことわざの語源となったものもある。
その中でも、

  • 疾風に勁草を知る
  • 妻をめとらば陰麗華、官につくなら執金吾

の二つは印象深い。執金吾を目指すような成り上りにはなれなそうだが、「疾風に勁草を知る」は座右の銘にしてもいいなと思ったくらい気に入っていた。

趙匡胤

こちらは宋の太祖。
宋という統一王朝も日本人にはあまり馴染みがない響きかもしれない。
これは日本との貿易があまり活発でなく、目にする機会が少ないためだろう。
平清盛の日宋貿易でちょっと出てくるが、これは南宋(※北方を金に抑えられ遷都後)とのものでちょっと別物として考えてみたい。
岳飛など抗金の英雄たちの話は南宋と金の話になるが、こちらはこちらでおもしろい時代なので。
ちなみに水滸伝は北宋の末期の話。

趙匡胤が皇帝となるまでについてもおもしろい。
宋の成立までには、唐が滅亡し五代十国時代を経ることになる。
五代十国時代という時期がすっかりノーマークだったが、この時代もおもしろそうだ。
日本の戦国時代が好きな人ならおもしろいと感じる時代じゃないかな。

小前さんが「趙匡胤」という本を出されているので、こちらを只今マーク中。

五代十国時代の本では唐にとどめを刺した朱全忠を描いた仁木英之さんの「朱温」を読んだくらいか。
朱全忠と李克用の話もおもしろいところだ。

秦以前も知りたい

中国史の小説なら、陳舜臣さんや田中芳樹さん、北方謙三さんなどいろいろな方がお書きになっているので、そういった本たちの入り口としてこの本はいいんじゃないかぁ。
今回は皇帝しばりということで始皇帝以降だったけど、秦以前の時代の人物伝みたいのを小前さんが書いてくれたらいいなぁ、とちょっと期待。

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