プロ棋士の目を通して将棋の観る【棋士の才能 ―河口俊彦・将棋観戦記集―】

  • 書名:棋士の才能 ―河口俊彦・将棋観戦記集―
  • 著者:河口俊彦
  • 出版社:マイナビ出版
  • 発売日:2017/2/23
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なんだか世間では藤井聡太四段の連勝記録更新で大盛り上がりなんだそうだ。
さて本書は2015年に亡くなった将棋界の老師こと河口俊彦八段の王座戦観戦記集。
王座戦だから日経新聞に掲載されていたものかな。そこから51局。
将棋戦型別名局集5 中飛車名局集 (将棋戦型別名局集 5)を買おうかどうか決めかねてちょっと大きな本屋さんにいったときに見つけた本。

将棋戦型別名局集5 中飛車名局集 (将棋戦型別名局集 5)

昔、将棋世界を買ってくると自分の中で読む順番がだいたい決まっていた。
まずは巻頭カラーをざっとみて、その次に河口老師の「新対局日誌」、それから真鍋九段の「将棋論考」。
それから頭に戻って順番に、そんな感じだったかな。
棋譜だけでなく読み物としておもしろい「新対局日誌」から読んでいくのが楽しみだった。
真鍋九段の「将棋論考」が書籍になった「升田将棋の世界」は名著だと思う。

王座戦

何と言っても王座戦といえば羽生善治三冠なんである。
なんせ王座戦が1983年にタイトル戦になってから6人の王座しかおらず、そのうち20期以上タイトルを保持しているのだから。タイトルをどんどん失っても引退するまで王座なんじゃないかと思わせるくらい圧倒的に王座だった。(2011年に渡辺明竜王に奪取されるも翌年再奪取)
だから本書が王座戦の観戦記集だってのを知った時は、羽生三冠の棋譜ばっかりになるんじゃないかと思った。
ところが、本書はタイトル戦だけではなく、そこに至る予選の棋譜がたくさん収録されている。

出てくる棋士はベテラン、中堅、若手、実力者、女流棋士など多士済々。
もちろんタイトル戦も収録されていて、前述の羽生渡辺戦ももちろん入っている。
戦型も振り飛車、矢倉、角換わり、横歩取り、などなど幅広い。
木村鈴木戦、行方郷田戦、南先崎戦、谷川内藤戦、加藤土佐戦、などなど目次を眺めてるだけで楽しくなってしまった。

対局の情景

新聞に掲載される観戦記だから一局を何回かに分けて描かれるわけだけれど、決められたスペースの中で次の日にまた続きが読みたくなるように書かなきゃいけないのだからこれは大変。
その語り口は指手の解説にとどまらず、対局者の人柄、控え室の様子や昔の棋士のエピソードが盛り込まれていてやっぱりおもしろい。
プロの棋譜になると難しくて指し手の解説だけだとさっぱりわからなくて終わってしまうことがあるのだけれど、盤上でおこっている戦いとともに、その周辺の時間や空間が垣間見られた気分になれて楽しいのだ。
昭和の時代から将棋を見て書いてきた河口老師だからこそ言える空気感があるんだと思う。
升田大山ならどうしたか、花村、真鍋のエピソード。阿部、行方などの控え室評。
対局者のその瞬間の人物描写。
そういったものが棋士としての目線で描かれているわけで。

デビュー当時から渡辺明竜王の活躍をずっと期待していた河口老師が、今の藤井聡太四段の活躍をみたらなんて書くだろうか。ちなみに藤井四段もちょっぴり名前が出てきてたな。

参考サイト

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