スラムダンクと同じくらいバイブルだった【先ちゃんの順位戦泣き笑い熱局集】
- 書名:先ちゃんの順位戦泣き笑い熱局集
- 出版社:日本将棋連盟
- 発売日:2000/07
将棋の先崎学九段の本である。A級に昇級したときにそれまでの順位戦の自戦記が20局まとめられている。
先崎九段は将棋の実力とともに軽快なエッセーでも知られる。
おそらく僕も初めの「一葉の写真―若き勝負師の青春 (講談社文庫) 」以外は読んでいると思う。
何度読んでもおもしろい本が多く、大好きな作家(?)さん一人だ。
その先崎九段がA級まで上り詰めていく様子をご自身で書いた本書。
こう書くと順風満帆のサクセスストーリーが書かれているようであるが、決してそうではない。
一番初めのC級2組を抜け出すのに8年かかり、そのあとはどんどん昇級していかれるのだが、勝った将棋も負けた将棋も、その当時の気持ちが語られている。
もしC級2組を抜けられなかったら雀荘を経営するつもりだったなんてことを、どこかで書かれていた。
佐藤康光九段、森内俊之九段など同世代のライバルたちとの、若いころの棋譜も収録されている。三浦、藤井、屋敷、丸山、鈴木、阿部、中川(※敬称略)こうやって名前を列挙するだけでも、そうそうたる面々、というか恐ろしい人たちばかりじゃないか。
この本は本当に何度も読んだ。表紙がボロボロになってしまうまで何度も何度も読んだ。
書いてあることが全部わかっていても、何度読んでもおもしろかった。
中学生の時からずっと同じスポーツを大学まで続けた僕にとって、この本は戦うための心構えを説いたバイブルだった。
試合の前は、よく中川戦を読んで気持ちを高揚させていた。同世代がスラムダンクを読んで気持ちを高めたのと同じだった。
中川戦は読んでいるだけでもほんと爽快になる。
試合前は阿部戦もおすすめですね。藤井戦なんかもいい。
中村戦のお口あんぐりも好きなんだよな。うん、全部好きです。
なかなか昇級できないことへの焦り、1局の中での気持ちの上がり下がり、1局1試合が1本の小説・映画を見ているようなドキドキなのだ。岡崎戦の「回る独楽は~」の序文はくすぶり続けていた僕にはとても痛烈で、それでもくすぶる僕は毎回同じところでドキッとした。
「悪い方は相手が間違えない限り」うまくいかないから、いかに間違いそうな局面を作るか、そのために精一杯やるかというのは、あきらめが早くチームメイトの中でも下手だった僕の、試合中の目標だった。
現状最善を尽くすべし これが今に至る僕のスタンスだ。
この本はきっとこれからも機会があるごとに読むんだろうな。続きを書いてもらえないかしら。
しかし今見ると、この本が20世紀の本でちょっとショックだ。
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