ロックを感じた将棋の棋士【将棋世界2015年7月号】
- 出版社:マイナビ
- 発売日:2014/06/03
行方の口調には▲3三銀に対する嫌悪感がにじんでいた。格調を重んじる行方将棋の美意識にそぐわないのだ
2015年7月号 P13
第73期名人戦第3局観戦記より
将棋は祖父からルールを教わって、高校生の時にちゃんと本読むようになった。
将棋世界では「新・対局日誌」と「将棋論考」が好きだった。
高校を卒業してからは将棋世界は買ったり、本屋でパラパラめくったりするだけの雑誌だった。
最近はネットで中継を見られるようになったから、将棋はもっぱらそちらで見ている。
たまたま本屋で見つけて、パラパラめくっていた時にぶつかったのがこの文章だった。
行方八段が羽生名人に挑戦した第73期名人戦。
同郷ゆえに応援するわけではない(無論その気持ちもある)が、楽しみにしていた名人戦だった。
この一文に出会って、立ち読みで済ませて帰るのがもったいなくて、買って帰って家で読んだ。
行方八段は竜王戦挑決3番勝負まで勝ち上がるなど、若いときから将来を嘱望されたが、名人戦に挑戦するまでの道のりはなかなかに遠かった。タイトル初挑戦(王位戦)が39歳の時、40歳過ぎてからの名人初挑戦なのだ。
少し上に羽生世代と呼ばれる分厚い壁が立ちはだかる中、下の世代に突き上げられながら、それでも初の名人戦だった。第1局を名人戦史上最短の手数で投了し、それはそれでニュースになっていたけれど、なんか、行方八段らしくてかっこいいなと思っていた。
行方八段がロック好きなのは有名な話である。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTが好きで、レフティで、将棋が強くって、高校生の僕にとってはとてもかっこよくて、そのイメージは今も変わっていない。(その行方八段が40代と言われて、正直ちょっと驚いている)
そのころ将棋世界誌で自戦記を書いており、毎月楽しみに読んでいた。
振り返って、前向きな思いも、率直なほどにネガティブな発言も堂々とするところに、他の記事の中にあって異質なものを感じていた。将棋の自戦記にたくさんアーティストの名前が出てきた。
ちょっと恥ずかしい感じの言葉で言えば、青年の生身をそのまま見せつけられているようだった。
多感ではなかった高校生だったけど、かっこいいと思っていた。
※その自戦記、書籍化してくれないかなぁ。ほんと、すごく読みたいんだけど。
僕は将棋が弱いので、手の良し悪しはよくわからないことが多い。
行方八段の形が乱れても前に出る将棋、ギリギリのところで一発きかしを入れてくる感じ、直線的な勝負を恐れず切りあう感じ、よくわからないけど、なんかすげーなって思う。それで名人に挑戦するんだぜ。
冒頭に引用した文章の「嫌悪感」「行方将棋の美意識にそぐわない」という言葉は、そんな僕に引っ掛かったのだと思う。
「情念」を感じる将棋。
そんな風に思うのだけれど。僕の中ではemotionalっていうより、オルタナティヴ・ロックで情念なのだ。
この時の名人戦は負けてしまったけれど、また行方八段が大きな舞台で将棋を指せますように。そんな姿を見ることができますように。楽しみだよな。
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[…] 僕はきっと熱心な将棋ファンではない。指す方はもうずっとしていないし。 それこそタイトル戦や朝日杯の中継があるときにパソコンの前でぼぉっと見ていたくらいのもんで。そういう意味じゃ初めから「観る将」だった。 違う棋戦が同日にあったり、朝日杯みたいに同じ時刻に対局があったりすると、ウィンドウを2枚たちあげてみたりしてた。(たいがい途中から追えなくなる、特に終盤) 昔は「将棋世界」とか、終わってから時間がたたなきゃ結果や解説が見れなかったけど、今ライブで見ることができるようになって、スポーツ観戦してる感じに近くなったと思う。 […]
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