猫と幽霊と絵師のお話【歌川国芳猫づくし】
- 書名:歌川国芳猫づくし
- 出版社:文春文庫
- 発売日:2016/8/4
べらんめい口調の人気絵師、歌川国芳を主人公にした小説。
8匹の猫、妻とその母、2人の娘と暮らす国芳は通いの弟子たちとともに自宅の仕事場で仕事をする。
病弱な妻の世話を母に任せ、仕事が終われば弟子たちや火消しの棟梁と近所の店へ夕飯に繰り出す生活。
60歳を目前にした人気絵師の周りに起こる、大小の様々な事件の短編集。
キャストと時代背景
登場人物には、葛飾北斎の娘応為、安藤広重、8代目市川團十郎などなど当時の文化(芸能)のメジャーどころがたくさん登場する。
元弟子の後の三遊亭圓朝も登場。
時代背景
ペリーが来航し、水野忠邦の天保の改革は失敗、江戸時代も幕末に向かって行くあたり。
天保の改革の改革などで質素倹約が求められ文化としては派手なものが処罰されかねないご時世に、国芳はその反骨心も手伝って風刺的な作品を残し、人気絵師となっている。
ペリーの来航によって蘭学など西洋の知識文化に対してもお上は神経を尖らせている。
それは江戸の庶民の中に暮らし、風刺などでもともとお上の受けの良くない国芳に対しても影響を与えており、かけだしの下引の松吉が国芳の様子を探っている。
猫の国芳
8匹の猫を飼っている国芳。
物語は飼っている黒猫が行方不明になったところからスタートする。
国芳には人間も他の動物も、同じ生き物として思えている。
これに対し広重はあくまで人が中心、人から見た目線でとらえている。
猫の登場シーンや描写は思ったほど多くはないが、猫好きである国芳がどのように世界を見ているか考えているかがわかる。
国芳の女性の好み
通いの女の弟子が一人、奥には妻とその母、娘が2人。
どうも国芳の好みはむっちりとした肉付きの女性らしい。
妻と母親に向ける複雑な感情。過去に見つかった自分の春画と弟子に向ける視線。
幽霊は存在しているか
幽霊の出てくるシーンはいくつかある。
弟子のご隠居さん、8代目市川團十郎、からんころんと下駄の音。
さて、これが幽霊だったのか、はたまた国芳の見た幻想であるのか、誰かのいたずらか。
死神の姿
57歳の老境に入った国芳は死神を描きたいという。
しかし死神をどのような姿で描くのか決めかねている。
幽霊絵などを数多く手がけてきた国芳だが、幽霊と死神は違うものらしい。
死神は自分の姿に似て現れるという。
偽物の国芳や幽霊の團十郎が現れて。。。
猫と幽霊と絵師のお話
死神を描きたいと願う人気絵師の晩年の感情。
広重た弟子たちの絵を、専門的に評価する部分とライバル心が見える所があったり。
幽霊絵や血の流れる絵も描いてきた国芳が描きたかった死神とは。
また本書の中に死神や幽霊が登場しているのか?
ホラーじゃないけどゾクッとするようなシーンもあったな。
怖いモンスターやお化けが襲ってくる系じゃなくて、いるのかいないのかゾクッとするような。
日本的なホラーですね。
美術史や絵のことはよくわからないけれど、歌川国芳で画像検索して出てきた絵は確かに見たことがあるものが結構あった。
巨大な骸骨の「相馬の古内裏」、華陀による関羽の腕の無麻酔切開手術「通俗三国志之内 華陀骨刮関羽箭療治図」、「源頼光公館土蜘作妖怪図」もみたことあるな。
関羽の囲碁の相手は誰だったかな?王甫かと思ったけどWikipedia見たら馬良だった。。
猫好きな人は有名な国芳、こんなまとめもありましたよ。
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