東北人が東北人を書いたということ【炎立つ】

  • 書名:炎立つ
  • 著者:高橋克彦
  • 出版社:講談社文庫

今「炎立つ」を読んでいる。3巻まで読了した。 大河ドラマにもなった作品。
昔からあまりテレビを見なかったので、大河でやっていた記憶はあるけれど、誰が出ていてどんな話なのかはよくわかっていない。前九年の役・後三年の役の話である。

著者の高橋克彦さんは岩手県のご出身。
東北に関する歴史小説、時代小説というものは他地域に比べ少ないのではないか、と思っている。
様々な原因が考えられるが、小説の題材となるような話がなかったから、ということではないのではないか。

日本史における中心はあくまで京都(東京)であり、その勝者に対する敗者、もしくは敗者に対する敗者であることの多かった東北地方にはそういった資料が残りにくかった。残っている資料には勝者側からの資料しかなかった、というのが一因ではないか。
この場合、東北地方とは白河以北を指している。白河の関がひとつ大和朝廷と東北文化の境界であったと考えられる。文化の均一化の進んだ現代で考えても、東北以北の大雪が降ることを前提とした生活は、自ずと東北以南の生活とはやはり違うものである。

もともと東北地方には豊かな文化があったという。
三内丸山遺跡をはじめ、縄文時代には温暖な気候で大集落があったと。日本海を利用した、北海道や海外との交易、また、金色堂の平泉や十三湊の安東氏、京文化の花開く浪岡御所を開いた北畠氏(この辺は北方謙三さんの北畠顕家を描いた破軍の星(http://goo.gl/78JsWa)がおもしろかった)など、豊かな風土と文化水準をそなえた場所だったと。

この様な話題は、近畿や関東以外の地域にはよく見られるものだと思う。
東北地方は九州地方との類似性があるのではないかと思っている。方言しかり文化性しかり。
ところが、九州地方を舞台とした歴史小説、時代小説が比較的多くあるのにも関わらず、東北地方を題材とした小説が少なかったはどうしたことか。

敗者としての歴史(敗者というのは、勝者側からみた視点であり、客観的視点ではないと思う)の他にも原因はたくさんあるのだろうが、僕は小説家の数をひとつ原因ではないかと仮定してみる。
海音寺潮五郎さん、最近なら葉室麟さん、ぱっと思いついたって九州出身の小説家はたくさんいそうな気がするから。

調べ方は高橋克彦が受賞されており、比較的僕の読む本に受賞者が多い気がする「吉川英治文学賞」と「直木賞」の受賞者の出身地をWikipediaで調べて、片っ端からリスト化した。

それをグラフ化したのが上図。見事に仮定はずれています(笑)
やっぱり東京出身の方が多くなっちゃいますね。東北も九州も思ったより差がない。むしろ人口比率で考えたら、多いに善戦しているという巻だろうか。
出身地と成長した場所が違うなんていうことはざらにあるだろうから、出身地でまとめるのは乱暴だということは承知。ひとつの傾向が出てくればとおもったんだけど。
差がつく前提でここまで書いてきたのにどうしたものか(笑)

そうすると何が原因かなぁ。地理的に九州の方が貿易文化圏として中国が近いことと、瀬戸内海の水運を利用して京都方面から九州まで一気にいけること、が原因のひとつになるだろうか。結局京都(東京)を中心にして、以下に資料化できていたのか、資料の整理分析が進んでいたのか、という方向に落ち着けたくなる。

ちょっと考察に失敗してしまったけど、何が言いたかったかっていうと、高橋克彦が東北出身・在住で、東北の歴史を小説にされることについて何か考えてみたかった、ということか。
2016年現在においても、東北地方のイメージは他地域の方にとってどんなものなのだろう。
いまだに「日本の田舎のイメージ」を背負っているところはないだろうか?
2016年現在という言い方をしたけど、それは最近になってドンドン地方の均一化が進んでいる気がする、といか地方の地域性が特化した形で発信され、興味がない部分に関しては一切興味をもたれにくくなっているように感じるのだが、逆に昭和の時代には地方の地域性のイメージといった部分が色濃く残っていて、ちょっと敗者的な東北のイメージの中で、中央とは別文化圏の話を東北出身の方が書いた、ということに無理矢理こじつけて考えたかった。ということになってしまうのかな。
僕の場合ルーツが東北になるのだけれど、東北人でも自分とこの歴史のことなんて良く知らなかったりするわけで、最近ちょっと興味が出てきたということで、何かオススメの小説があったら教えてください。という話。

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