今晩の晩酌は日本酒にしましようか【月に捧ぐは清き酒 鴻池流事始】

  • 書名:月に捧ぐは清き酒 鴻池流事始
  • 著者:小前亮
  • 出版社:文春文庫
  • 発売日:2016/11/10
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後の鴻池財閥の始祖・山中新六の一代記。
小前さんの本は中国ものばかり読んでいたので、日本の歴史ものはちょっと新鮮味があって読むのを楽しみにしていた本。
中国歴史小説や、日本の歴史小説以外にも「残業税」とか、そういう本も書かれているんですよね。

山中新六の父は尼子再興を目指す山中鹿介。鹿介は我が子新六を叔父の山中信直に預ける。
信直とその妻やえの元で育った新六(新右衛門)は、幼馴染の愛妻はなとともに父とは違う商賈の道に進むことを決める。
菊炭の商いから身を起こし、師匠信直の「酒は人を幸せにする」を目指し、酒造りの道へ進んだ新右衛門が、日本発の清酒を作るまでのお話。

酒は人を幸せにする

戦国のこの時期まで、お酒といえば濁り酒であったということがまず驚きだった。
現代から考えると、日本酒は透明なお酒であって、濁り酒が特別なものっていう意識があったから。
濁り酒が主流だった時代に、済んだお酒(清酒)を売り出した山中新六を主人公に持ってきたのがまず興味をそそられる第一歩。
実はこの本は小前さんのブログでご自身が紹介されているのだが、その中で父親である山中鹿介を郷土の英雄と呼んでおられる。
その郷土の英雄を差し置いてあえてその息子にスポットライトをあて、戦国期の合戦の中での人間ではなく、あえてそこから商売の道へ進んだ人物を取り上げているのがおもしろい。

生涯師匠と呼ぶ山中信直は評価の高い人物で荒木村重に仕えるが、不和を起こし下野。
鴻池村に居を構え、新六に教育を施す。その教育は決して商人になるためのものではなく、鹿介のあとも告げるように武士であるような教育を施すが、その教えは商賈の道に進んでなお有意義。
信直が決めた新六の愛妻はなとは、生涯連れ添い、お互いに相手をいい男、いい女をして感じている。
本書のなかでも、花のぴりりとしたアドバイスが新右衛門の背中を押す。

清酒をメインに据えているだけあり、酒造りの工程やシーンなど細かく描写されている。
酒師と蔵人、そしてその主人である新右衛門と、酒という商品開発にかける熱意は現代の商品開発とおそらく変わることはないだろう。
豊臣から徳川への時代の変わり目にあって、新右衛門が成功した理由は新しい権力者の首都江戸に置いての販路と客層をいち早く手に入れることができたから。それとそのための運搬技術があったからだという。
この透明な酒(清酒)がクライマックスの一つの象徴として出てくるシーンは爽快だった。

大物との対面

本書の中で、商売の上で新右衛門は数々の歴史的な人物と対面している。
茶の湯の千利休であり、徳川の宿将大久保忠隣であり、家康の懐刀本多正信であり・・・
その中でも印象深かった人物を二人挙げたい。

大久保彦左衛門

大久保彦左衛門のイメージっていうとどんな感じだろうか?
江戸の町のご意見番?一心太助に出てくる感じ?ちなみに僕の中の一心太助は緒形直人さんのイメージだ。
本書の中にでてくる彦左衛門はそのイメージに比較的近いかもしれない。
ちょっとおせっかいで、ちょっと人情味もあって。

僕の中の大久保彦左衛門のイメージは宮城谷昌光さんの「新三河物語」のイメージだ。
「新三河物語」は大久保彦左衛門を主人公に三河時代から大久保党について書かれた本。

新三河物語〈上〉 (新潮文庫)

亀井茲矩

もう一人は亀井茲矩だ。本書では新右衛門の敵役として登場しており、新右衛門が菊炭で成功するとすかさずその利益をかっさらう。
その他にも他人を犠牲に関ヶ原の後に加増されるなど、人間的に陰湿なところのある武将として描かれる。
そんな亀井茲矩、どこかで読んだなぁと思ったがようやく思い出した。

火坂雅志さんの「壮心の夢」という短編集だ。
亀井茲矩と金髪の女性っていうイメージが引っかかっていたのだった。
あちらでは海外貿易を目的に琉球支配を目論む野心家としての亀井茲矩が登場する。

壮心の夢 (文春文庫)

おすすめの日本酒

米どころな新潟や東北にはそれはもうおいしい日本酒がたくさん。

清酒なら町のお酒として友達がすすめてくれた「鶴の友」。
濁り酒なら「三戸のどんべり」なんてどうだろう?おいしいですよ。

鶴の友 上白1800ml

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晩酌に日本酒もいいですねぇ。
好きだけど弱い酒だからなぁ。。。。さて。。。

参考サイト

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