今回の妖はちょっと怖い【明治・妖モダン】
- 書名:畠中恵
- 出版社:朝日文庫
- 発売日:2017/7/7
「しゃばけ」シリーズの畠中恵の本が出てたから悩まず購入。
今回の時代は江戸時代じゃなくて明治。
「しゃばけ」シリーズは妖たちが当たり前にいるフほのぼのでちょっと切ないァンタジー世界だったけど、こちらはちょっと怪談テイストかな。
明治時代になって西洋のものがどんどん身近なものになって、価値観も西洋的なものが入ってきて、いろんなものがなんだかまだまだごちゃまぜな時代。
西洋的なもの、新しいものとして新聞であり、民法や選挙があり。
アーク灯や馬車鉄道に人力車があって、主人公たちのいるところは東京府の一等地、煉瓦の街並みの銀座。
そんな中にもお堀があり(堀がたくさんあった東京っていうのは江戸的じゃないかと思う)、夜になると人々は提灯を灯す。
街灯が整備されたことによって街全体は明るくなったけれど、だからこそその明るさの届かないところには取り残された闇。そこには時代から取り残されつつある江戸的なものが潜んでいたのかもしれない。
怖いということ
妖はいるのかいないのか。
わからない、はっきりしないことへの恐怖。わからないものへの恐怖心は自分の中で膨らむと際限を知らない。
この手法は京極夏彦さんの「京極堂」シリーズと通じるものだと思うけど、あちらと違って「この世には不思議な事など何もないのだよ」という摩訶不思議な古書肆は出てこない。
まったくなんだって「わからない、はっきりしないこと」がこんなに怖いのか。
「お前は誰だ」というのはなかなかに怖い。
わかってしまえば、起こってしまえば、怖いものにも対処ができるかもしれない。
幽霊が出たら逃げられる。(立ち向かう人もいるかもしれない)
出てこない幽霊からは、逃げようがない。
幽霊に限ったことではないけれど。
会社で、学校で失敗するのが怖い。何かの相手は自分よりすごいかもしれない。
でも失敗しなければ、対処できない。(失敗しないリスクマネージメントは大事ですよ)
戦って見なければ相手のすごさがわからない。どれくらいすごいのかわからなきゃ、乗り越えることもできない。諦めることできない。
かといって、目の前に妖・幽霊の類に出てきてほしいかと言われると、ちょっとね。
文庫のしおりが「明治・妖モダン」仕様なのが嬉しい。
この本もシリーズになっているみたい。
次のが文庫になるのを、息をひそめて待っていようと思う。
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