「挫折は青春の必須科目」ってかっこいい【幻想映画館】
- 書名:幻想映画館
- 出版社:講談社文庫
- 発売日:2016/2/5
履歴書に「特技:探し物」と書いたら山の上の登天郵便局に採用された新卒のアズサのお話に続く「幻想」シリーズ第2弾。
※1冊目の幻想郵便局について記事はこちらです。
幻想郵便局に呼び起こされたノスタルジー【幻想郵便局】
今回の主人公はちょっと天然っぽい女子高生スミレ。(趣味が一人シリトリというのもね)
物語は冒頭からいきなりスミレの家庭に大波乱。電車を降りて見てしまったのは父親の…
いきなり大荒れの展開から飛び込んでしまった不思議な映画館「ゲルマ電氣館」であっさり恋に落ちたスミレは、この世からあの世、その狭間に起こるトラブルに巻き込まれて…
こんな感じでドタバタのストーリーには力があって、一気に読み終えてしまった。
スミレは 幻想郵便局で登場した強烈な大奥様の一族で、高校では自己紹介で特異体質を思わず話したために入学早々孤立して。
特異体質な上に、一人シリトリが趣味で家庭環境はぎくしゃくしてて、もしかしたら別なお話なら暗い暗い引きこもりキャラになっててもおかしくない素養があるにも関わらず、このお話の中の主人公は話に流されながらも思いついたところを声にしたり行動したり、案外お気楽でバイタリティに溢れている。
前作にも登場した元怨霊、現幽霊の真理子さんも登場、相変わらずよい味出してます。
挫折は青春の必須科目
挫折は青春の必須科目と心得なさい。
タマエ大伯母様のセリフより
学校では級友となじめず、予期せず飛び込んだゲルマ電氣館で一目惚れしたスミレは、家族との会話の中で思わずゲルマ電氣館で働きたいと言ってしまう。父母が反対する中、それに対するタマエ大伯母様のセリフがこれだ。
これを機にスミレは不登校、よく考えたらフリーター的な生活に突入するわけだけれども。
人生の酸いも甘いもかみ分けてきた大伯母様のいうことだけに貫禄がある。
しかし「挫折は青春の必須科目」ってかっこいいですね。
わが身を振り返ると、最近挫折だらけなのは必須科目をいつまでも及第できないせいか、それとも未だに青春時代真っ只中なのか。年々挫折が増えていく気がするんだけど・・・
プラス一丁目の町は現世なのか
壊れたスクリーンを修理するために真理子さんとスミレが向かったのが「プラス一丁目の町」。
ここには
- なくなった風景の幽霊
- その場所に必要なもの
- 切実に探しているもの
- 行き場のない人や幽霊
がいるらしい。
プラス一丁目の町って響きがいきなりいいですよね。
このプラス一丁目の町に僕らは辿り着くことができるのか?認識しなければ存在しない町。
認識できなければ、辿り着けない場所。
世捨て人と、幽霊と、思い出のもの・町並みだけで構成される風景ってのは、ちょっと吹き溜まりのような、昭和レトロなようなイメージ。オート三輪が停まっているいるような。
そうか、過去になったものしかそこには住み着けないんですね。行ってみたいと思うけど、そこに辿り着くキーとかきっかけを持ってないのかなぁ。
ある意味パラレルは世界で、過去になったものしかそこには住み着けないのに、現世の延長で時間は流れていそうだから、過去のものたちも我々同様に歳をとっていくわけですよね。
あ、でも人にしろ風景にしろ、幽霊になったものは歳をとっても見た目は変わらないのかな?
自分がプラス一丁目の町に行ったら見たいものって何だろう?
建て替える前の祖父母のうちなんかいいな。未だに夢に出てくるし。年々間取りがおかしくなっている気がするけれども。夢の中だと、あるはずのない渡り廊下があって、まっすぐ行くとなぜか小学校の体育館の渡り廊下に繋がるという謎の間取り。
そういえば映画館なんてずっと行ってないなぁ。
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