老人とサツキの花とお蕎麦【伊賀の残光】

  • 書名:伊賀の残光
  • 著者:青山文平
  • 出版社:新潮文庫
  • 発売日:2015/9/27
Amazonで見る

『つまをめとらば』で直木賞を取られた青山文平さんの本。
青山さんの本を買うのは初めてだが、宮城谷昌光さん、高橋克彦さん、浅田次郎さん、宮部みゆきさんなどなど、直木賞作家の本とは相性がいいので読んでみたいと思っていた。

参考サイトに挙げた新潮社のページに掲載されているコピーを引用すると、

還暦過ぎの伊賀衆・山岡晋平。友の斬殺事件を究明せんと、江戸に澱む闇を斬る――。
青山文平 『伊賀の残光』 | 新潮社より引用

ということだったけれども、老剣士が江戸の悪をバッタバッタと撫で斬りにする痛快剣豪小説、ではない。
むしろ刀を振るうシーンは少ない。
伊賀だから忍術大戦争、ってこともない。(伊賀者っていうのは一つのテーマではあるのだけれど)
そんな本書の主人公山岡晋平は伊賀衆の山岡晋平であり、安永徳川家治の時代。
伊賀同心の仕事として門番を月に4、5回、そのほか生計のためにサツキ栽培をしている。
忠也派一刀流を学び、一人娘の千瀬を御掃除之者宮地平太に嫁がせ60歳を過ぎ現在は一人暮らしをしている。
そういえば御掃除之者の小説があったな。

江戸城 御掃除之者! (角川文庫)

平谷美樹

本書のキーワードの一つが「突っ支い棒」。
人は生きて行く上で突っ支(か)い棒が必要なのかそうでもないのか。
無意識のうちに何かを突っ支い棒にしてたりするのか。
もう一つ「鋳型」というワードも出てくるけど、こちらはパターンとか常識とか、そういうニュアンスで捉えてもよさそうだ。
老境に入ったからこそわかることか、晋平が感じたこと考えたこと。
幼馴染に「よう頑張った」と呟き続ける晋平。
そういえばサツキといえば、今年見に行ったのだった。


斜面にモコモコと咲くツツジを見る【さつき山公園:新潟県】

ちなみに本書の解説は同じく直木賞作家の葉室麟さん。
解説でも触れられているが、青山の作品は藤沢周平さんに通ずるところがあるのだそうだ。
藤沢周平さんの本は実家の祖父の本棚にたくさんあったが、どこから手をつけたもんだかということであんまり読んでいないので、自身では比較できないのだけれど、本書を読んでなんだか「懐かしさ」めいたものを感じた。
それが藤沢さんの本に通ずる部分を感じたからなのか、作品中の風景に既視感を感じたからなのか、登場人物に共感するところがあったためか、それとも文章や言葉の使い方のためなのか、さっき読み終えたばかりの今でははっきりしない。
物語の途中で旅立っていった好漢半四郎はその後どうなったのか、サツキ姉さんは何をしてるのか。
青山文平さんの本は初めてだったけど、今後本棚に増えていきそうな気がする。
まずは、作中に出て来てどうにも美味しそうだったから、夕飯は大根おろしでお蕎麦にしようと思う。

参考サイト

広告
広告

この投稿へのコメント

コメントはありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

この投稿へのトラックバック

トラックバックはありません。

トラックバック URL