人生で三度もインドにいった王玄策の活躍物語【天竺熱風録】

  • 書名:天竺熱風録
  • 著者:田中芳樹
  • 出版社:祥伝社文庫
  • 発売日:2011/6/9
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久しぶりに田中芳樹さんの本。
銀河英雄伝説から読み始めてずっと好きで読んでいる。
この本の主人公は王玄策という実在の初唐の中堅役人。
初めて聞いた名前だった。

この王玄策という人物にはどのようなエピソードがあったのか。
ベタだがWikipediaから引用する。

王玄策(おう げんさく、生没年不詳)は唐の太宗、高宗に仕えた中堅の文官(官僚)。中国から天竺(インド)へ3回(一説では4回)にわたり外交使節として赴き、特に2回目の天竺行において現地の内紛に武力介入したことで知られている。しかしそれ以外に特筆すべき業績はなかったため、旧唐書、新唐書とも単独の伝を立てていない。
王玄策 – Wikipedia

本書はこの王玄策第2回目のインド行を描いた作品である。

あらすじ的な

物語は三蔵法師こと玄奘の夢から始まる。
玄奘の見た夢は天竺で世話になった戒日王が亡くなる夢だった。
戒日王は混乱の北インドを統一し、唐やネパールなどと修好した人物。

1度目の天竺行きでは副使として赴いた王玄策。
今回は唐の正使として赴くこととなる。
副使は蒋師仁、その他族弟や玄奘の弟子の僧智岸と彼岸、兵士たちを連れての天竺行きである。往路はチベット、ネパールを通るヒマラヤ越え。
智岸と彼岸の漫才のようなコンビとともに険路を天竺に向かう。

ついた天竺では戒日王はなくなっており、その混乱を突いて登極した王に王玄策一行は捕らわれてしまう。
さてさてこのピンチをいかに脱し、主人公王玄策はどのようにこれを乗り越えたのか。
こんな感じのストーリーだ。

語り口調

まず文章の感じがいつもの田中芳樹さんとはちょっと違う。
講談風のタイトルと語り口調のなのだ。
章ごとに区切り、今回はここまで次回はいかになりますことやらお楽しみに、といった感じ。
反三国志(周大荒)を読んだことのある人なら、あんな感じだと言えばイメージが近いだろうか。

いつもの感じとは違うが、これはこれでなんか新鮮でリズム感があって読みやすい。
いずれも敵よりも少ない兵力で、背水の陣を利用した戦いや、象兵を率いた敵の大群を奇襲によって大勝するシーンなど、田中芳樹さんらしい感じももちろんある。

最近読んだ本との時代関係

時代としては初唐、太宗李世民の時代。
最近読んだ本では、王玄策が中大兄皇子とほぼ同時代の人とのことだから、澤田瞳子さんの「日輪の賦」より少し前の話か。また小前亮さんの唐玄宗紀はこの100年後くらいの話になる。

日輪の賦の感想はこちら
この国ができあがる日に【日輪の賦】

唐玄宗紀の感想はこちら
玄宗が楊貴妃に出逢う前【唐玄宗紀】

怪しげな老バラモンや、田中作品らしいお転婆娘とパワフル妃、報われない王さまと登場人物は多士済々。
現代でも大変なヒマラヤを越えてインド行きを、もちろん飛行機もない時代に人生で3度も行い、あげくに行った先で大活躍して史実に埋もれた、王玄策という人物の物語。
初めて知った人物、インドの古い時代を舞台としたところ、バラモン教と仏教と、それが交わる国際関係と、なんだかいろんな要素のつまった本でおもしろかった。

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