初草の君のけなげ、みずらの伊勢物語【ばけもの好む中将 伍 冬の牡丹燈籠】
- 書名:ばけもの好む中将 伍 冬の牡丹燈籠
- 出版社:集英社文庫
- 発売日:2016/9/16
ばけもの好む中将シリーズも5冊目に突入。
タイトルがいいよなぁ。ばけもの好む中将だもの。
怪異を女人のごとく愛でるばけもの好む中将こと宣能と、宣能に振り回される12人の姉を持つ男宗孝のお話。
今回は宗孝の姉梨壺の更衣(8番目)と小宰相の君(11番目)の出番は少なめ。
前作で登場した12番目の真白の君が物語の中心にいる。
短編の連続でストーリーが繋がっているパターンの小説。
前作後半から物語は登場人物たちの心の中や、複雑な人間関係と宮廷のありようと大きく動き始めた感がある。
牡丹燈籠
副題の牡丹燈籠は落語の怪談噺。
死んだ女房が夜な夜な通ってきて・・・というやつ。
それを模したお話からスタート、ところがばけものを好むはずの宣能は怪異巡りを控えるようになっていて、普段と調子の違う宣能を心配した宗孝はこの屋敷に宣能と訪れる。
全編通し、元気のない宣能を心配する宗孝と宣能の妹初草の君が真怪を求めトライする。
初草の君
初草の君は共感覚(シナスタジア)の持ち主。文字が色や動きに見えるという。
そのため文字を読むことができない。
帝の外戚たる右大臣家の娘として、将来東宮(皇太子)の妃になることが決められている初草の君は、文字を読むことができないても聡明で兄のことを慕っている。いつのまにか初草の君の遊び相手として害のない人物として認定された宗孝は、自身の栄達うんぬん抜きにして初草の君と宣能のために働く気持ちになっている。
今作では初草の君の出生の秘密が語られる。
共感覚(きょうかんかく、シナスタジア、synesthesia, synæsthesia)は、ある刺激に対して通常の感覚だけでなく異なる種類の感覚をも生じさせる一部の人にみられる特殊な知覚現象をいう。 例えば、共感覚を持つ人には文字に色を感じたり、音に色を感じたり、形に味を感じたりする。 英語名 synesthesia は、ギリシア語で共同を意味する接頭辞 syn- と感覚を意味する aesthesis から名づけられた。感性間知覚。
Wikipedia 共感覚より
春若君
こちらも前作から登場の春若君。宗孝の12番目の姉真白の君に恋をして身分を隠して猛烈アタック中。
ところがわんぱく真白の君にはみずらの子供のことだからと全く相手にされない。
そんな真白に業を煮やした春若君は強行手段「芥川」に打って出る。
芥川は伊勢物語の「白玉かなにぞと人の問いし時露と答へて消えなましものを」のエピソードを下敷きにした作戦。
春若君の渾身の勝負に真白の君の心は動くのか。
宮中の年越しの行事の様子が出てきたり、男装の十の姉上は相変わらず謎の活躍を見せたり。
宗孝、初草の君、春若君、真白の君など複雑になっていく人間関係はどうなっていくのか。
宣能と父親や叔母たちとの関係はどうなるのか。
春若君はいまだ元服前のみずら(髪型)。
そういえば「鬼灯の冷徹」で鬼灯が黒歴史になるからと流行のみずらにしなかったなんてエピソードがあったなぁ。
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