どぉーんといく薄斎先生は大剣豪か?【やぶ医薄斎 贋銀の湊】

  • 書名:やぶ医薄斎 贋銀の湊
  • 著者:幡大介
  • 出版社:角川文庫
  • 発売日:2016/9/22
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これは実は剣豪小説だったのか?
やぶ医薄斎シリーズ第2弾。

第1弾の時の記事はこちら
やぶ医薄斎は藪医者なのか?【やぶ医薄斎】

今回も枯田薄斎の噛み合わなさが、すべての歯車を狂わせる。
出羽の小藩の洪水と、そこの港を舞台にした贋金の事件に薄斎がどう関わるのか?
噛み合わなさと勘違いと思い違いがすべての人の思惑を違う方へと押し流していく。

しかし、薄斎先生おそろしく強いのだ。
本人が本人の剣術について語るシーンがあるが(戦闘しながら)、要約すれば最短距離で動き、相手よりも早く攻めるということか。
理屈としては簡単そうに聞こえるが、それを実行して負けないっていうのは、恐ろしく強い。
しかも我らが薄斎先生、刀をお持ちでない。
刀はその場その場で現地調達しているのだ。
ということは、毎回毎回刀の形状や長さや重さもまちまちだということだろう。
その条件の中で、「最短」「最速」で相手をなぎ倒す、違うな、吹っ飛ばすわけだからもはや達人だろう。
「まっすぐ」の声とともに薄斎先生が剣を振るうたびに「どぉーん」という効果音をつけたくなってくる。

公儀の思惑、尾張藩の暗躍、金座の使命と、たくさんの大義名分と思惑が外側を固めているお話なのに、薄斎先生がそれを破壊していく感じは実に爽快。
薄斎先生は悪く言えば俗物であり、酒を飲むと大言壮語を吐き、金はいつもなく、己の画才になぜか自信を持っている。
このシリーズの落とし所がどこなのか、どこかで大きく話が動くのか、薄斎先生が何かに目覚めたりするのか。
気持ちが落ち込んだ時とかに、どぉーんとさっぱりできるシリーズだ。

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