たまには漫画も。達人伝の戦国時代は宮城谷昌光さんがおすすめ【達人伝 ~9万里を風に乗り~】

  • 書名:達人伝 ~9万里を風に乗り~
  • 著者:王欣太
  • 出版社:アクションコミックス
  • 発売日:2016/6/28
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普段漫画はあまり読まない。
今買って読んでいるのは、この「達人伝」と「鬼灯の冷徹」くらいだし、コンプリートしたのもそんなにない。
王欣太さんの本は『蒼天航路』がおもしろくて一気に読んだ。『蒼天航路』は数少ない全部買った漫画のひとつ。
『蒼天航路』では荀彧、鮑信、張繍、楽進、龐統、曹昂、何晏・・・好きなキャラクターがたくさん。
ストーリーも濃いキャラクターたちを引きつれて史実に沿って展開する、エネルギーある作品だった。

時代背景

時代は中国戦国時代末期。
戦国七雄と呼ばれた秦・楚・斉・燕・趙・魏・韓の力関係は、西方の秦を一強に他の6国が合従連衡を繰り返しながら、秦の天下統一へ向かう時代。
秦は始皇帝の祖父昭襄王、宰相は范雎。
秦の各国への侵攻の進むなか、荘子の孫荘丹・無名・丁烹の3人「丹の3侠」が時代の中でどのように活躍していくのか?

孟嘗君など戦国四君、賈人から宰相となる呂不韋、無敵の将軍白起、「刎頸の交わり」藺相如と廉頗、大盗賊盗跖などこの時代も興味深い人物には事欠かない。
これらの人物がどのように描かれるのか、主人公たちとどのような関わりを持つのか。

時代背景などを知るには

このあたりの時代に関しては宮城谷昌光さんの本で読んだところが大きい。
孟嘗君』、范雎を主人公とした『青雲はるかに』、呂不韋を主人公にした『奇貨居くべし』などがある。
かなり錯綜した時代、いろいろな角度から見ることのできる時代だと思う。
『孟嘗君』に出てくる白圭がまたかっこいいのだ。
また、『奇貨居くべし』では秦の宰相魏冄がこの時代に対し、大きな影響力を持っていたことがわかる。(達人伝には魏冄出てないけど)
秦という国がいかにして強国となり、どのような組織体制だから戦争に強いのか、その辺りのバックグランドがわかると、『達人伝』の世界をより楽しめると思う。

暴虐の白起

『達人伝』は上党をめぐる秦と趙の戦いの真っ最中。
秦の将軍白起は、『達人伝』の中では二枚目として描いたと王欣太さんは書かれておられる。
個人的な武勇はともかく、戦争させたらこの人無茶苦茶に強い。戦争なら呂布より強い。勝った後に殺した人の数で有名になっているところもあるけど、それだけ勝ち続けた人。

荘子という思想

「胡蝶の夢」とか「万物斉同」の荘子。老荘思想の親玉の一人。三国志に出てくる南華老仙のモデルとも言われる人物。
著作と言われる「荘子」という書物は、読み物としてもおもしろいらしい。(未読)
荘子の考え方は儒教に対するものとしてとらえられがちだけど、この時代は諸子百家の時代、後の時代と違いまだ儒教的国家というものが成立していない。
礼・義などの概念は捉え方はさまざまにせよ、儒教の特権とではなくて、この時代の社会通念として当たり前のものだったのかもしれない。
荘丹は荘子の孫だけあって(?)、なかなかにすっとぼけたキャラクター。
権力も持たず、武勇もなく、知謀もなく、荘子直伝の「大呼吸」をもって駆け回る丹の三侠は周りの人を巻き込んで今後どのように活躍していくのか?

『キングダム』っていう漫画が流行っているみたいだけど、こちらは未読。
時代設定はだいたい同じくらい。こんな世界が2000年以上前にあったのだから凄いよな。
この時代を経て、歴史は項羽と劉邦へ、その後長い漢の時代から三国志の世界へと続いていく。
三国志ばかりじゃなくて、この辺りのお話も読めるのは楽しいなぁ。



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