すごくビジュアル的な小説だと思った【村上海賊の娘】

  • 書名:村上海賊の娘
  • 著者:和田竜
  • 出版社:新潮文庫
  • 発売日:2016/6/26
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和田竜さんの作品を読むのは「のぼうの城」に続き2シリーズ目。
読む前から前評判の高かった本作、流行ものはあんまり食指が動かないことが多いが、村上海賊という今まであまり知らなかった分野に興味があって楽しみにしていた。
文庫版では4巻だが、お盆休みを利用して一気に読んでしまった。

主人公(ヒロイン)は能島村上の景姫

村上海賊は能島、来島、因島の3つに分かれていて、主人公は能島村上党首武吉の娘「景」姫。
景は冒頭からなかなか容姿、性格についてヒロインとは思えない言われよう。
曰く「醜女・悍馬」と。

日焼けした長身で手足は長く、目が大きい。
作中で言われているのは、堺に来る南蛮人のようだ、と。
醜女と言われる基準が当時の日本人基準であり、現代であればどうか?

景の容姿を現代的に表現しようとすれば、
「引き締まった体から伸びる手足はすらりと長く、良く動く大きな瞳は攻撃的ながらも活力に満ちている。」
まぁこんな感じだろうか?
決して容姿が悪い表現にはならない気がする。
漫画やアニメになったときにヒロイン映えするというか、そういうキャラクター設定をされたように思った。

ストーリー展開

話の筋としては、
景は女だてらに「戦」に憧れ、女性として結婚に対しても憧れている。
浄土真宗門徒を助けた景は、南蛮人慣れしている泉州にいけば美人扱いされるという門徒の言葉にまんまと釣られ、門徒たちを大坂本願寺へ連れて行くことを承諾する。
連れて行った門徒たちと、辿り着いた大坂で出逢う織田信長に従う一癖も二癖もある泉州の侍たち、本願寺に助力する雑賀衆鈴木孫一や村上海賊の仲間や毛利旗下の結婚相手候補児玉就英や乃美宗勝。これらの人物に囲まれ、戦を目の当たりにした景は、憧れであった戦と現実の戦の違いと、そこにかける人間としての自分の資格について絶望して行く。
能島に帰った景は、小早川隆景の思惑を知り再び木津川へ向かう。
父武吉の言う「鬼手」とは?
景が飛び込み村上・毛利水軍と織田方の水軍との戦いはどうなって行くのか?
といったストーリー。

本願寺に対する毛利の兵糧入れの史実をもとに第一次木津川合戦とその前後の戦いがメインとなる。

戦いのシーン

この作品ではひとつひとつの戦闘のシーンが長い。
時間的に短いところにたくさんの文章を使っている。もちろん複数の局面が同時進行しているので、厳密にひとつひとつではないかもしれないが、逆に短時間の中で局面がテンポよく変わって行くのでリズムに乗って読み進めることができる。

登場人物たちが使う武器にも特色を持たせている。
自分で武器を用意しない乃美宗勝もいるが、真鍋七五三兵衛の銛、村上水軍の焙烙玉、村上吉充の青龍刀、孫一の鉄砲などなど。
このあたりも漫画化・アニメ化したときにキャラクター設定として強いそうだ。
また、水軍同士の海戦ということもあり、舟の種類も関係してくる。安宅船、関船、小早と本作では3種類の船がでてくる。

印象的なシーン

景の憤激

門徒衆は「もう浄土に行くことは約束されている」のだからその御礼として本願寺に馳走するという。
天王寺砦の戦いにおいて下間頼龍が「引けば無限地獄」の旗を立てるのを見て激怒する。
約束されていないじゃないか、ということだ。
宗教色のある軍隊が、禁忌を背景に士気を鼓舞する例は他にもあるだろうが、景としては自分が関わった人間たちが騙され苦戦していることにどうしても納得ができない。

景親開眼

景の弟景親は日頃景に虐められ、振り回されている。
また、自分の臆病な性格にコンプレックスを抱えている。
真鍋七五三兵衛との海戦において、七五三兵衛の挑発や景の姿をみて景親は突如目覚める。
敵兵を切り落とし、自分が強いことに気づく。(日頃景に鍛えられたおかげで)
景親は七五三兵衛にはとてもかなわないことを認めつつ景親なりの強さを手に入れる。

すごくビジュアル的

何度かいっているように、表現がなんとなくビジュアル的だと思う。
景が七五三兵衛を斬るシーンや、七五三兵衛の銛投げ、雑賀衆の鉄砲3弾打など、頭の中で絵としてイメージしやすいものがとても多かった。
アニメ化されてもきっとおもしろい作品だよなぁ。
って、もう漫画化されてるんですね(汗)

2〜4巻はこちら。表紙絵好きだなぁ。
  

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